久々のブログ更新。ほぼ一年ぶりである。で、「なまづま」。
書店でジャケ惹かれして、その後ずっと気になっていたんだが、Twitter文学賞なるもので、注目を集めたと聞きつけ、「ならば読もう!」となった次第。
Amazonによる梗概はこう。
激臭を放つ粘液に覆われた醜悪な生物ヌメリヒトモドキ。日本中に蔓延するその生物を研究している私は、それが人間の記憶や感情を習得する能力を持つことを知る。他人とうまく関われない私にとって、世界とつながる唯一の窓口は死んだ妻だった。私は最愛の妻を蘇らせるため、ヌメリヒトモドキの密かな飼育に熱中していく。悲劇的な結末に向かって…。
主人公の「私」の手記として(つまり後日譚として)語られるのだが、その「私」の思弁を弄した内省語りというか、文体含めて回りくどいことこの上なしで、そのへんのねちっこさも相まって、全篇にわたって粘液ドロドロの世界観。ただ、その内省に絡めた人間洞察が秀逸で、数少ない登場人物の内面をえぐっていく場面は、若い作家とは思えないほどきめ細かい。
苦言を申せば、粘液、ヌメり、悪臭に対する描き込みをしているにも関わらず、もうひとつグロさが足りない。要するに作者の心根が優しすぎるんだな。
吐き気をもよおす鬼畜度があれば、ヌメリヒトモドキの妻に対する「私」の感情が、より鮮明に抽出できたんじゃないだろうか。
もし映像化されることがあれば(いや、ないない(笑))、山崎さんの役は是非とも大杉漣でお願いしたい。
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